ワインの販売価格はどう決める? 価格に影響を及ぼす考慮すべき要素
「高すぎず、安すぎず」が悩ましい
ワインを輸入販売するにあたって、たいへん悩ましいのが「いくらで売るか」です。
高すぎても売れない。
かといって安すぎると事業を継続できず、さらにはオーストリアワインの品質そのものが低いと思われる恐れもあります。
世の中、「高いから信頼できる」という人も一定数いますので。
さらに、変動要素に応じて価格がコロコロ変わるのも避けたいところ。
ワインの値段が数ヶ月ごとに変わるのなんて見たことないですからねー
じゃあ、原価(ワインを販売するまでにかかった費用)に対してどれくらいが適切な価格なのか?
結論を言ってしまえば、これには答えはありません。
自分で考えるしかないのです。
ただ、考慮すべき要素はありますので、今回の記事ではそのあたりをお伝えしようと思います。
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考慮すべき要素
為替の変動
海外から輸入するので、まずこれが大きな要素になります。
例えば、初回の輸入時は1ユーロが150円だったとします。
このレートを適用して値付けに反映するのはちょっと危険。
なぜなら、次回輸入時は1ユーロが170円になっているかもしれないからです。
この為替変動リスクをどう吸収させるかは本当に悩ましいところです。
一番円安だった時のレートとするのか、ワイナリーに支払った時のレートにするのか。
一般的には輸入が許可された日の数ヶ月前〜半年ほど前の為替を反映させる傾向にあるそうです。
そして、円安で仕入れ価格が上昇したときは、緩やかに販売価格に転嫁するとのこと。
いきなり値上げはしないということですね。
仕入れ価格そのものの変動
オーストリアをはじめ、ヨーロッパでは農業としてワインを作っています。
農作物なので、その年の収量や天候によってブドウの価格は変動します。
つまり、ワインの卸価格もビンテージによって異なるのです。
実際、オーストリアの2024年のブドウ収量は前年比のマイナス20%。
ブドウの収量が減ると生産されるワインの量も当然減ります。
このため、卸価格も値上がりします。
私が取引している造り手さんの場合、2024年ビンテージの卸価格は10%ほど値上がりとなりました。
これは、ワインが工業製品ではないことの証拠でもありますね。
ワインとは自然の恵みなので仕方がないことです。
税金
EU加盟国からの輸入であれば、日EU・EPAのおかげで関税はかかりません。
でも、酒税、輸入消費税、地方消費税は徴収されます。
酒税に関しては、ワインの場合100円/リットルが目安。
輸入/地方消費税に関しては両方併せて10%です。
しかし、税金で考慮すべきはこれだけではありません。
売上からの消費税、法人税、住民税も念頭においておく必要があります。
創業から2年間は免税事業者なので、売上からの消費税の徴収は免除されます。
しかし、その後は消費税を納めなければなりません。
法人税は決算で赤字の場合は収めなくても良いのですが、黒字化すると徴収されます。
法人の住民税は、赤字か黒字かに関係なく徴収されます。
消費税と酒税に関しては、元々の販売価格に含ませておき、消費者から徴収(回収)するのが基本。
その他の税金は利益の中から支払う必要があります。
もし、利益を薄くしか乗せていない場合、税金の支払いが重くのしかかってくるのは想像できますよね。
固定費
事務所の賃料が思い浮かぶかと思います。
このほかに、顧問税理士への顧問料も、月々定額であれば固定費と捉えても良いかと思います。
これらは確実に回収しないと事業が継続できないのでワインの販売価格に含ませましょう。
変動費
変動費はたくさんあります。
ざっと列挙すると以下のような感じです。
- オーストリアから日本まで輸送費
- 荷揚げ港(または空港)から保税倉庫までの輸送費
- 保税倉庫での保管料
- 通関手数料
- 食品届手数料
- 保税倉庫から保管倉庫まで輸送費
- 倉庫搬入作業料
- ワインの保管倉庫の賃料
- ワイン発送手数料
- 受注したワインの送料
1は輸入量、手段(船か航空機か)、ドライコンテナかリーファーコンテナかで変わってきます。
また、海外の船社に依頼することが多いため、為替の影響も受けます。
2は荷揚げした港から保税倉庫までの距離によります。
ちなみに、航空輸送で成田空港に着いた場合、保税倉庫が隣接しているのでゼロ円です。
東京港に到着したときは、江戸川区の保税倉庫までの輸送費が取られました。
3について。
保税倉庫にはフリータイムという制度があり、一定期間は無料で保管できます。
しかし、航空輸送で輸入した場合のフリータイムはわずか24時間。
通関に時間がかかるとこの費用が上がってしまうので注意が必要です。
4、5は変動としましたが、業者によって「1ワイナリーにつきいくら」と定価があります。
ただ、業者を変えると定価も変わるので変動費に区分しました。
6は保税倉庫から保管倉庫までの距離によります。
成田から市川の倉庫までで3万円弱でした。
7は搬入するワインの量によります。
また、輸入したワインに国内販売用のラベルもここで貼ってもらうのですが、
ラベル1枚の作成料が20円〜50円、貼り付け作業も1本につきいくら、といった具合にお金がかかります。
8は倉庫業者によって変わるかと思いますが、私が利用している倉庫の場合、
利用面積に応じて保管料が算出される仕組み。
つまり、ワインが売れて利用面積が減っていけば保管料も安くなっていきます。
頑張って売らねば💦
9は倉庫業者に発送業務を委託しているため発生する費用です。
10は送料と箱代。
私の場合、9と10合わせた価格を若干ですがディスカウントして、「送料」という形で購入者から回収しています。
ちなみに、「事務所の光熱費とか通信費は?」と思われた方もいるかと思いますが、
私が借りている事務所の賃料に、光熱費とインターネット使用料(そのほか清掃費用も)が定額で含まれています。
なので、これらは固定費の一部ですね。
利益
ここまで見てきて、「これだけワインの価格に乗せるとすでに高額なのでは?」
と思いますよね。
はい、けっこうな額になります。
でも、利益もしっかり乗せておかなければ事業の継続は無理です。
ワインの仕入れにかかった費用を回収するだけになってしまいます。
では、利益はどのくらい乗せるのが妥当なのでしょうか?
色々調べたところ、3〜4割が一般的のようです。
原価の総費用を0.6〜0.7で割り戻したのが販売価格となるわけです。
しかし、ここでも将来を見越した注意点があります。
今のところ、私は通販だけの販売免許ですが、今後は飲食店や酒屋さんへの卸しもやっていくつもりです。
その場合、卸価格は一般小売価格の35%から20%オフとするのが通常だとか。
もし、薄〜くしか利益を載せていない場合、飲食店などに売れば売るほど赤字になってしまう可能性があるのです。
もちろん、相手が年間どれだけ買ってくれるかにもよりますが、今現在、そこが見えないのでやや多めに利益を乗せておくのが無難かと思います。
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最終的には競合商品との比較も
価格には理由があります。
とはいえ、同程度のクオリティのワインに比べて高すぎると誰も買ってくれません。
ある程度は競合に近い価格にする努力も必要です。
ではどうやって価格を同程度に近づけるか?
私の場合、固定費や変動費の一部を原価に含めず、利益から負担することにして価格を下げています。
また、利益率もワインによって変えています。
一番普及してほしいものは、利益率をやや薄めに設定しています。
まとめ
ワインの販売価格を決める際の、考慮すべき要素について説明しました。
私自身、今の価格が適正かどうかまだまだ思案中です。
売れ行きや為替などにより価格改定もあり得るでしょう。
あっ、将来的な価格改定も販売価格の設定上考慮すべきですね。
「いくらで売るのが妥当なのか?」
本当に難しい問題ですが、この記事が価格設定の一助になれば幸いです。
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