小規模インポーターには大打撃!国内の有機表示の法改正で輸入ワインの価格高騰?!
10月1日より有機表示に関する法施行
令和7年10月1日より、お酒に「有機」とか「オーガニック」と表示する場合、農水省が指定する認証団体からの認証を受けることが必須となります。
もちろん英語で「ORGANIC」と表示する場合も同じ。
海外の生産者さんがその国や地域の基準に従い、オーガニック表示の認証を受け、ワインのエチケットとか裏ラベルに「ORGANIC」と表示した場合でも、同様に日本の改正JAS法の規制対象になります。
たとえそれが商品名の一部であったとしても、です。
これだけなら「面倒になったな〜」程度ですが、それでは済まないのです。
なんと認証を得るためにはかなりのお金がかかり、これはそのままワインの価格に跳ね返ってきます。
最近の円安、輸送費の高騰など、小規模インポーターは頭を悩ませながら、なんとか価格を抑えるように努力をしているのですが、ここに来てお役所から、さらに価格高騰につながるような規制が降ってくるわけです。
しかも、違反すると1年以下の懲役又は100万円以下の罰金ですよ。
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法改正のポイント
これまで、お酒に「有機」または「ORGANIC」と表示したい場合は、国税庁告示に基づいて表示することができました。
この表示に関しては、認証や検査のための経済的な負担はありませんでした。
しかし、改正JAS法では、農水省が指定する登録認証団体(誰が指定しているのかが重要です)による有料の検査を受け、さらに認証団体からの有料の認証を受ける必要があります。
では、インポーターが「ORGANIC」の表示があるワインを輸入するにはどうすれば良いのか?
これには次の2つの方法があります。
①JAS認証品を輸入する
これはJASマークがついたワインを輸入することを意味しますが・・・
この時点で
「農水省って大丈夫かな?」
と心配になってきます。
海外の小規模な造り手さんが、わざわざ日本のJAS認証を受けるためにお金を出すなんてあり得ないです。
ちなみにこの場合は、日本のインポーターは認証を受ける必要はないとのことですが・・・
アメリカやチリのような、工業製品としてワインを作り、日本に対して大量に輸出しているような国のワインメーカーは、もしかしたら自費で認証を取得するかもしれません。
でも、家族経営の小規模な造り手さんに認証取得をお願いする場合、インポーターがその費用を負担することになると思います。
②同等国から同等国の認証品を輸入する
同等国とは、農水省が、日本の有機JAS格付制度と同等の水準にあると認めた格付認証制度を有する国のことです。
この場合で有機表示をするのであれば、EUや自国から受けた認証の証明書を入手する必要があります。
「あ、この方法ならなんとかなりそう!」
と思った人、役所の怖さを知りませんな。
例え同等国から輸入する場合でも、インポーターはJAS認証を取得し、有機JASマークをボトルに貼る必要があるのです。
つまり・・・
認証取得のために、農水省が認定する団体にお金を支払う必要があるということ。
どうやっても、オーガニックと表示する以上は、認証費用の負担から逃れることはできない仕組みになっています。
なお、お酒に関してはカナダと台湾との間で有機同等性を締結しているとのこと。
現在、アメリカ、カナダ、EU、アルゼンチ等と有機同等性締結に向けて交渉を行なっているそうです。
なぜか主要なワイン生産国やEU諸国が後回し。
そしてその進捗状況についてはいっさい公表されません。
だから、どの国と有機同等性を締結したかということは、農水省HPや関連情報がありそうなサイトを自分でチェックする以外に知る術がないのです。
ちょっと闇の気配がしてきませんか?
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お金で買える認証の意義は?
ちなみに、認証を取得するためにはおいくら万円必要なのか?
まず、ワインを保管している倉庫が検査を受ける必要がありますが、これが一つの倉庫につき30万円から。
年間の費用ということなので、毎年受ける必要がありそうです。
もうこの時点で小規模インポーターの実情無視です。
なぜなら、小規模インポーターは1つの倉庫を丸ごと借りているのではなく、1つのフロアーの1区画を間借りしています。
つまり、1つのフロアーに複数のインポーターが同居しているようなもの。
この場合、30万円以上かかる検査費用はどのインポーターが負担すべきなのでしょうか?
「私は有機とかオーガニックは扱っていない」
と言い切れば、この費用を払わなくて済むのでしょうか?
また、この倉庫検査は倉庫業者の協力も必要です。
そのフロアーを借りている全てのインポーターが要求すれば、倉庫業者も動いてくれるかもしれませんが、
そうでない場合、
「借りている人全員が求めていることではないので・・・」
と協力してくれない可能性もあります。
次にかかるのは有機JAS講習会費用。
認証事業者とそれ以外、という区分があるのですが、正直この区分は何なのかよく分かりません。
定期に行われる講習を受講する場合、認証事業者であれば22,550円/人、それ以外は24,200円/人。
個別に講習を受けると人数制限なしで1回につき11万円。
さらに輸入業者の認証費用。
「有機JAS認証等手数料一覧」というものに記載されています。
これに記載されている区分自体がイマイチ理解不能のなのですが、海外のオーガニックワインを輸入する場合は「輸入業者」でしょうか?
仮にそうであったとした場合、
・初めての有機申請に1万5000円+税
・面積100平方メートル以下で9万3500円+税
・調査時間が3時間以内の場合は2万6400円+税+検査員の交通費
面積とは有機農産物・有機食品に係る保管や出荷のための関係施設の合計面積とのこと。
一体トータルでいくらかかるのか全くもって未知数。
でも、一つ言えることは、このお金さえ払えば有機表示ができるようになるということ。
要は「お金で買える認証」なのです。
この法改正のそもそもの趣旨は、
「日本産の有機食品や有機酒類を有機先進国と同等にし、日本の農産物の輸出を伸ばしたい。」
というものであったと推測しますが、結果的に小規模インポーター叩きになっています。
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有機表示はしないのが得策
小規模インポーターは「自分が惚れ込んだワインを多くの日本人に楽しんでもらいたい!」と強く思っています。
しかし、有機表示をしたばかりにワインの価格が高騰してしまうと、お客さんは離れていくかもしれません。
なぜなら、数百円レベルではなく、数千円単位の値上げもあり得るからです。
ですので、造り手さんの思いを伝えられず残念な気持ちはありますが、「オーガニック」という表示をしないことが最良の方策となります。
今のところ、ユーロリーフや有機を表すマークだけの表示はOKなので、これで凌ぐしかないですね。
なお、自社のホームページや販売サイトに「有機」とか「オーガニック」と書く場合、
それが商品と結びつかない一般的な内容であればOKとのこと。
例えば、自社ホームページの中のワイナリー紹介記事に、
「有機大国オーストリア」とだけ記載しているのであれば、販売しているワインと有機栽培が直接結びつかないのでセーフ。
でも、「このワイナリーでは全て有機栽培されたブドウを使用してワインを作っています。」
と書くと、そのワイナリーのワインが全て有機ワインということになるのでNGだそうです。
なかなかグレーな部分が多いので、やはり「有機」とか「オーガニック」という文言を外すのが得策と言えます。
今後は”有機”と”ORGANIC”以外も規制対象?
今のところ、規制対象になるのは「有機」と「オーガニック」という表現だけで、BIOやビオディナミを対象とするかは議論中とのこと。
しかし、遅かれ早かれこれらの言葉も規制対象になると予想します。
そして、「有機」を意味するさまざまな言語、表現、公的なマークも規制対象になっていくのではないでしょうか。
なぜなら、小規模インポーターはワインの価格を抑えたいので、認証を避け、別の方法で有機ワインであることを表現しようとすると思います。
そうすると、認証団体の収益が上がらないので、認証団体は農水省に規制拡大を申し入れる・・・
農水省はその申し入れに沿って規制を拡大する・・・
ありそうなストーリーじゃないでしょうか。
おわりに
有機表示の規定を明確にするの良いことだと思います。
しかし、なぜそこに小規模インポーターが大金を払う必要があるのか。
大規模な輸入業者が支払う100万円と、1年間に1000本未満しか輸入しないインポーターにとっての100万円は全く違うのです。
改正JAS法を真に有効な法律にするためには、認証取得に係る費用の無償化、又は事業規模に応じた負担とする必要があります。
また、すごく重要な法改正にもかかわらず、農水省による周知活動は不十分です。
知らないインポーターも多いと思います。
私は、たまたま日本ワイン輸入協会のセミナー告知でこれを知り、セミナーに参加して、その恐ろしい内容を認識することができました。
ちなみに、その時のブリーファーは国税庁の職員。
農水省の職員ではなかったです。
農水省は一体どこに視点を置いてこの法改正を推し進めようとしているのか、甚だ疑問でしかありません。
彼らの定年後の安定した受け皿作り?
ではないと信じていますが・・・